「新しい才能が自由に映画を作るための制度が日本には不足している。」
2016年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した若き映画監督、深田晃司さんの言葉です。NPO法人日本映画映像文化振興センターはまさにこの点に焦点をあてて活動を行っています。同法人代表理事の竹下資子さんに同法人の活動内容についてお話しを伺いました。
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◇素晴らしい日本映画を届けたい
竹下さんは昭和14年生まれ。フィルムによる日本映画の黄金期を経験した世代です。
竹下さんが演出に興味を持ったきっかけは、大学時代に出会った、劇作家の木下順二さん。彼の戯曲に魅せられ、演出の分野を目指します。
大学を出て映画に出会い、監督(演出家)になろうとしましたが、当時女性には演出家の仕事はなく、記録(スクリプター)になりました。
昭和40〜50年ごろ、映画の現場でスクリプターとして働いていた竹下さんは、数々の名監督と出会ったそうです。「“すごい監督”は既に頭の中で作品を一分の隙もなく完成させていて、スタッフは部下であり手足です。キャストは動く被写体なんです」と竹下さん。
名監督の情熱を直に感じながら仕事をしていた竹下さんは、「監督が命がけで撮った映画のすごさ、すごみを届けたい」と思うようになったそうです。
その思いは、過去の名作映画を上映し、実際にその制作に携わった監督等からお話を伺う「監名会」の発足に繋がります。1981年に発足した監名会は、その後さらに発展を遂げ、2000年にはNPO法人日本映画映像文化振興センターの設立に至ることになりました。 |
◇若い世代が自由に映画を作れるように
現在の同法人の活動は主に上映事業と映画・映像制作体験事業の2本立てです。
上映事業は前述の監名会が中心。「良い映画は良い観客が作る」を合言葉に、過去の名作映画を鑑賞し、制作上の秘話・苦労話を関係者から伺える機会を作ることで、日本映画の検証と次世代への継承を図ります。「たった一人でも『この映画がぜひ見たい』と言ってもらえることは非常に幸せです」と竹下さん。
一方で監名会の参加者は中高年が多く、それだけでは次の映像世代を引き継ぐ子どもたちに映画のセオリーと制作の心構えを伝えることは難しいという課題もあります。 |
そこで、映画・映像制作体験事業では、子どもたちがプロと一緒に映画の制作を体験するシネマスクールを開催しています。2002年に始まったこのシネマスクールでは、子どもたちが、撮影所時代の映画の作り方を学び、その方法、心を受け継いでいけるような環境作りを目指しています。実際に、映像の世界に進み、毎年シネマスクールを手伝ってくれている卒業生もいるとのこと。まさに、冒頭で紹介した深田監督の言葉にある「若い才能が自由に映画を作るための制度」の一つとしての役割を担っていると言えます。 |
◇日本映画界の新たな黄金期を夢見て
団体の今後の活動について竹下さんは、監名会で優れた日本映画を紹介する活動を続ける一方で、シネマスクールをより充実させ、子どもたちに本格的な映画の技術と日本映画の心を伝えながら、作品を制作したいと考えているそうです。
安定した人気を誇る監名会ですが、それでも、既に述べたとおり参加者は中高年が多く、今後参加者数が減っていくことも考えられます。素晴らしい日本映画を後世に残し、日本映画界を発展させるには、日本映画離れが進んでいるといわれる若い世代にも裾野を広げていくことが不可欠といえます。
子どもたちに日本映画を伝える活動について「やりがいがあります」と力強いまなざしで語る竹下さんは、日本映画界が新たな黄金期を迎える未来を見据えています。
「日本の最高の監督が、命がけで撮った過去の名作映画を子どもたちにもみてもらって学んでもらいたいですね」
(2016年6月3日取材 中村亮子) |
【団体概要】
団体名:NPO法人日本映画映像文化振興センター
所在地:〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-45-5 新宿永谷ビル4階408
電話:03-3200-2118
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※本取材記事は、区民活動支援サイトキラミラネット登録団体について、区民による「プロから学べる!情報誌の作り方講座」の受講生が当該団体をインタビュー取材したものです |
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